2011年7月14日木曜日

菅首相は、「成熟拒否」? ―精神科医の論文より―

精神科医の片田珠美さんの論文を読みました。
大要、以下の内容でした。

人が大切なものを失った時にどうした反応を示すのかを、スイスで生まれアメリカで活躍した精神科医のエリザベス・キューブラー・ロスの説を引いて説明しています。キュー・ブラー・ロスは、死に瀕している患者200人以上にインタビューした経験にもとづき、末期患者は、
第一段階 否認
第二段階 怒り
第三段階 取り引き
第四段階 抑うつ
第五段階 受容
の五つの段階を経て、ようやく死という最大の対象喪失(自分にとって大切な対象を失うこと)を受容するに至るのだと述べています。
このように、対象喪失を受け入れるためには、いくつかの段階を通過し、それに伴う苦悩や不安を乗り越えることが不可欠なのですが、この対象喪失を受け入れられない「成熟拒否」が増えていることが憂慮されており、これが国家の指導者にまで蔓延しているとのこと。

たとえば、福島第一原発の事故では、政府も東京電力も当初「メルトダウン(炉心溶融)」の可能性を否定し続けていましたが、2か月後に1号機の核燃料の大半が溶けて崩れ落ちており、しかも圧力容器の底に穴があいていることが判明するに至って、はじめて認めました。
これは、当初は惨状を受け入れられず、否認によってパニックになることを防ごうとしたものです。
この状態は、対象喪失の最初のショックを和らげるために日常生活でしばしば用いられますが、この否認の段階でフリーズしてしまったのがひきこもりです。これは、自己愛を傷つけるおそれのある現実をなるべく見ないようにするための防衛反応とのこと。
そういえば、地震直後、首相は全くテレビに出ていなかったなぁ・・・

そして第一段階の否認を維持することができなくなり、「やはりそうだ。問違いなんかじゃない」ということを思い知らされると、次に出てくるのが怒りです。菅首相が部下や関係者を怒鳴りつけてばかりいるのも、深刻な事態を受け入れられないかららしい。
これも、日常生活でしばしば用いられる防衛メカニズムであり、何か問題が起こると、とりあえず自分以外の誰か、あるいは何かのせいにしてその場を切り抜けようとします。つまずきや失敗などの事実を否認しきれなくなって、どうしても認めざるをえない場合でも、自分に能力がなかった、努力が足りなかったなどとは、できるだけ思いたくないからです。

こうして他人に怒りをぶつけていても、ずっと否認し続けられるわけではなく、現実に引き戻されるたびに落ち込んで、抑うつ的になります。
対象喪失を正しく受け入れるためには、この抑うつの段階をきちんと通過することが不可欠なのですが、それに伴う痛みや苦しみに耐えられないがゆえに、あえて躁状態になって頑張り、活発に動き回ることによってできるだけ直視しないようにしようという、成熟拒否があるそうです。
最近、菅首相が次から次へと場当たり的な施策を打ち出しているのもこれかもしれません。

今、菅首相に必要なことは、「現実をどう受け入れるか」という事ではないでしょうか。
そのうえで、「あきらめる」べきことは受け入れるしかない。「あきらめる」とは「明らかに見る」ことでもあり、現実をきちんと認識しない限り、日本の再生のためのリーダーシップは果たせないのですから。

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