2011年10月23日日曜日

悲観的な予測、楽観的な指揮

この不景気の中、私が以前勤めていた鋼材販売会社が自社工場を購入し、今年の1月に引越ししました。
そのことは嬉しいことなのですが、工場の引越しとなると、さぁ大変。
1000トン近い鋼材をはじめ、大型の加工機械の移動、クレーンの設置、配電、等々、年明けのオープンまでの限られた時間で全て行わなければなりません。しかも、いったん設置したら簡単には移動できないので、一切のミスは許されません。
私も、前工場長としてアドバイスをしたり、引越し当日は久しぶりにクレーン操作をしたりして、お手伝いをさせていただきました。

そして、無事に計画通り引越しも終わり、数ヵ月後にたまたま寄せていただいていた時のことでした。
引越しに関わった関係で気になっていたので、新工場をあちこち見て回ってみました。
すると、どうしても気になる部分が一箇所。
2階の床部分が歪んで下がっているような気がしてならないのです。
さっそくそのことを工場長に伝え、後日専門業者を呼んで計測してもらうと、やはり下がっていたそうです。12メートルスパンで3センチ。1/400の歪みでした。新工場は、当然重量物に耐えられる構造で太いH鋼が何本も入っていたのですが、2階に上げた鋼材の重量が多すぎたみたいでした。
それは緊急の問題ではないのですが、経年劣化で歪みが大きくなったり、地震などで、下手をすると2階部分が落下する危険もあるとのこと。
さっそく、2階部分の重量制限をしたり、重いものは端の方へ置くレイアウトに変更するなどの措置がとられました。
しかし誰もがそんなことを考えもしていなかったみたいで、
「多田さん、なんでわかったんですか?」と・・・

ここなんです。

昨日市民文化会館で行われた、「危機管理とリーダーの条件」で元内閣安全保障室長の佐々氏が講演されました。
「リーダーは、悲観的なまでの予測に基づき、楽観的に指揮を執れ。」と。
しかし、その悲観的な予測と言うのは、こうした公演を聴いたからできると言うものではないんですね。
佐々氏自らも、東大安田講堂事件やあさま山荘事件などで、体を張って陣頭指揮を執ってこられた経緯があって始めて言える事であって、私も次元は違いますが、「無事故」に対して、多くの先輩から叱咤や指摘をされながら徹底した訓練を受けてきた経緯があったから、床の歪みが見抜けたのです。

やはりどうしても、徹底した訓練を受けた危機管理のスペシャリストが必要です。
池田市では、自衛隊出身の危機管理官が頑張っておられます。
しかし、「無事故を勝ち取る」ということは、その労の多さに比べ賞賛はほとんどありません。多くの人にとって「無事故」は、普通の状態ですから。ですから、頑張りがいのない部署でもあります。
講演の最後で「本日の講演が、皆様における危機管理にとって何かのお役に立つことを願っております。」と、締めくくられていましたが、私もそのことを強く心から願います。
そして、普段の平穏な生活の陰ではこうした人たちが頑張ってくれていることに感謝したいと思います。

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