2011年5月29日日曜日

大阪国際空港(伊丹空港)跡地の「副首都」構想を検証する。

内閣府の中央防災会議のシミュレーションによると、東京湾北部を震源とするマグニチュード7・3の地震が発生した場合、死者は約1万1000人、負傷者は約21万人、全壊・火災焼失する建物は約85万棟。 建物・インフラ被害などの直接被害に生産額の低下といった間接被害を加味した経済被害は約112兆円に上ると想定しています。
だが、実際には被害規模はこの程度ではすまないとの見方もあります。
今のように、政治、経済、文化、教育の中枢機能が東京に集中する中、こうした首都直下型地震は日本の致命傷となりかねないと指摘されています。

そこで、今回の震災の教訓を活かして国家レベルでの災害リスクの分散を考え、首都機能のバックアップ拠点とする「副首都」建設を急ぐ必要があるとの機運が高まっています。
更には夏場、いや相当期間の東京首都圏の電力不足により計画停電も予想されるなか、国会の超党派の「危機管理都市推進議員連盟」が検討を行ったところ、大阪国際空港(伊丹空港)跡地が最有力となったとのことです。
(跡地も何も、現在稼働中で飛行機もバンバン飛んでますが・・・)
これに対して、大阪府の橋下知事は持論の「大阪都」構想と絡め、首都機能の「デュアル化」(双眼化)、「伊丹空港廃止跡地への第二霞ヶ関誘致」を強く主張しているそうです。

もしも本当にそんなことになったら、我が池田市の将来構想は大きく変わってしまいます。
現在の大阪国際空港は、兵庫県の伊丹市と大阪府の豊中市、そして池田市にまたがって立地しています。確かに敷地の広さや交通アクセス、東京からの距離など条件的には最適かもしれませんが、もしそこに「副首都」が建設されたら、池田市の根本的なあり方も変わり、昨年夏猛暑の中で審議した「総合計画」など吹っ飛んでしまいます。

そんな個人的な事情は置いておいて、私の意見を言わせてもらいますと、この「副首都」構想は実現しないと思います。
理由の第一として、費用対効果の問題があります。
古くは1999年に、首相の諮問機関である「国会等移転審議会」が出した答申では、国会を中心に10万人規模の都市を建設した場合、栃木 ・福島で4兆2000億円、岐阜・愛知で4兆1000億円としています。それが「副首都」構想では2.5倍の25万人。
東日本大震災の復興費用と福島原発の補償費用の捻出で財政のゆとりがない現在、不可能な話です。

第2の理由としては、新都市を建設するとなると10年単位の時間がかかると言うことです。
先述のように、大阪国際空港は現役で稼働中で、しかも震災直後は朝夜の時間帯枠を超えて使用され、その利便性の高さが再確認されたところです。そこに「副首都」が建設されるとなると、10年でも無理かも知れず、明日にも起きるかもしれない首都圏直下型大地震に、問に合いません。
現実に、国土交通省がこの夏に実施を予定する組織変更では、国土計画局に置かれている「首都機能移転企画課」を廃止し、他の部署が業務を吸収することになるそうです。

以上の理由から、「副首都」を建設して首都機能を代替させる案は、財政にゆとりができるまで無理と考えるわけですが、それでは現在の一極集中によるリスクを分散するためにはどうしたらいいのか?
私は、ジャーナリストの尾林賢治氏の案が最も現実的ではないかと考えます。以下、その趣旨を引用します。




京阪神の都市機能の集積を活用し、首都機能を代替させる案を検討してはどうか。
それも、まず当面は東京が被災したときに、直ちに国会、官邸、各省庁の国家中枢機能が遅滞なく動き始められるように、既存の施設を借り受けられるように用意しておく。
たとえば、国会は大阪か京都の国際会議場を使う。各省庁はそれぞれ関西の出先機関のスペースを大きめに確保する。
財政難の折、新しい施設の建設はできるだけ避けて、既存の施設を活用する。とりあえず、東京の3分の1か半分のスペースを確保しておけばよいのではないか。
大阪はオフィススペースが大量に余っている。議員宿舎などは新設しないでホテルを借り受ける契約をしておけば、無駄な支出を避けられる。
全省庁が必ずしも、大阪に集結する必要もない。例えば、宮内庁は京都に、外務省は神戸にという選択肢がある。
すでに大阪湾ベイエリア開発推進機構が2006年、関西が首都機能代替(バックアップ)エリアとしての役割を担うことを国土・防災・有事に開する法律や計画などに位置付けるよう国に提案している。
京阪神は首都圏の次に都市機能が充実しているし、東京との距離が離れているため、同時に大地震に見舞われる可能性が低い(名古屋では近過ぎる)。
それでも不安なら、福岡、北九州地区を第2の代替地域として準備することも可能だ。

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