2011年12月7日水曜日

発想の転換――エネルギー問題

3・11以降、世論は一気に原子カエネルギー撤廃に傾き、2011年春には日本にあるすべての原子力発電所の運転が停止する可能性が高くなっています。
そうした中、西日本では、今冬0.4%、来夏8.3%の電力不足が生ずるとの見通しが示されています。
また、原子力発電所が再稼動しない場合には、夜間も電力供給を火力発電によって代替することが必要となり、そのすべてをLNG火力と石油火力でカバーした場合の追加的な燃料コストは3兆円を超えると試算されています。
つまり、原子力発電所の停止と稼働率低下による電力不足、それに伴う問題は、日本全体でいますぐに、かつ、中長期の視野をもって取り組まなければならない問題となっています。



石炭か風力か原子力かという議論に力点が置くだけでなく、エネルギー効率の劇的改善を真剣に考えらなくてはならないとヴァイツゼッカー博士は述べています。
ヴァイツゼッカー博士は、地球環境政策の第一人者で、現在は、国連環境計画が創設した「持続可能な資源管理に関する国際パネル」の共同議長を務めています。ドイツの連邦議会(下院)議員、環境委員会議長を歴任し、「エネルギー効率」の問題に対する権威です。
昨年3月には、東京で「地球環境問題と倫理」をテーマにシンポジウムを開催されています。
近著『ファクター5』では「これまで人類の科学技術が行ってきた挑戦は、拡大をめぐるものであった。しかし、私たちの世紀における科学技術の挑戦は、持続可能性をめぐるものになるだろう。私たちは、より少ない量のエネルギーを代謝回転させて、豊かで幸福になることを学ばなければならない」と述べています。

つまり、資源の生産性を現在の5倍に増加させることが可能であることを示しています。
これによって、資源のさらなる消費を無くして貧しい国々のさらなる発展をもたらすこと、また、豊かな国々においてはその国の経済の健全性を危機にさらすことなく、資源の消費を五分の一に抑えることを提唱しています。
そして、ヨーロッパ諸国やアジア諸国の大半は、現在、資源の輸入に大きく依存していますが、それらの諸国が、そうした資源をこれまでの五倍、効率的に活用することを学べばどうなるか。
おそらくそれらの諸国の経済は繁栄し、これまでのように全ての資源を無制限に利用することを主張する国々をしのぐに違いないと主張しています。

これまでの社会は資源を大量消費することで豊かさを追求してきたのに対して、資源の大量消費が豊かさの根本条件ではないというのが、『ファクター5』の提言です。
そういえば先日参加した大阪府本部のセミナー「低炭素・省エネルギー循環型社会の構築」の折にも、大阪府の担当職員は、これまでごみとして焼却されていたものをいかにして再生可能な資源として再生するか、そこに力点を置いて話をされていました。
有限の資源を奪い合い、使い尽くしていくような飽くなき貪欲に駆り立てられた現代社会の流れを変えるために、こうした発想の転換が不可欠だと思います。

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