2011年12月27日火曜日

読書感想―「科学技術大国中国の真実」①


この本は、在中国日本大使館一等書記官として三年間、北京の日本大使館に勤務をされていた伊佐進一氏による著作です。
一等書記官というのは、徹底して相手の国のことを調査する立場のようで、著者は東大の航空宇宙工学科卒で科学技術庁にてあの『はやぶさ』回収プロジェクトに献身した経緯から、昨今の中国の科学技術について調査されています。

「中国のGNPが日本を抜いた」「有人宇宙飛行を成功させた」「中国産のスーパーコンピュータが世界最速の演算速度を記録した」「中国の拡大する軍事力を懸念し、日本政府は次期主力戦闘機にステルス戦闘機F35を選定した」等々、断片的な報道により最近の中国の動向に脅威を感じるものの、その全体像やこれからの日中のあるべき方向性など、明確に指し示すことができる人はあまりいないと感じています。
そうした中で、この一等書記官を勤められた著者による本著は、近年の新書の傾向と異なり、はっきりした専門性の上に立って、一般にはほとんど知られていない科学技術、および中国におけるその発展について、非常にわかりやすく記述されています。
そして更には、今後の両国のあるべき関係について、明快に語っておられます。

「経済指標や軍事力が、現時点における国力を評価するものであるとすれば、科学技術力は、一〇年後、二〇年後の国力を左右するものである。私が中国に赴任を希望した理由は、一〇年後、二〇年後、中国がどのような国となっているかを知りたかったからである。中国の科学技術力というものを知ることによって、中国の将来を推し量ることができる。実際に現場を訪れ、目で見て、直接話を聞いて、楽観的にも悲観的にも偏らない、中国の科学技術力の真の姿を知りたかった。中国の強みも弱みも、肌で感じたうえで、中国の将来について結論を出したいと思った。そして、それに対して、日本がどうすべきかをじっくり考えてみようと思ったからである。
赴任していた三年間、何度も、「こんな国で科学技術が発展することなんてあり得ない」との思いに捕らわれた。また、何度も、「この国の発展の可能性はすどい」と驚かされた。いったい中国のどちらの姿を信じればいいのか、この両面をどう理解すればいいのかと、格闘した毎日であった。」(本文序章より)

次回から、本著の中で感じた所を紹介したいと思います。

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