2012年2月19日日曜日

災害と人権

昨日に続いて、本日は池田市主催で開催された人権セミナーについての感想を書きます。



講演をされた矢崎由美子さんは、サンTVやラジオ関西でパーソナリティーをされているということで、テンポのいい口調で話をされ、2時間以上も話をされたのに全く苦になりませんでした。
矢崎さんは、阪神大震災のときに芦屋のマンションで被災をされたとのことで、その時の避難所生活の話などを通して、「ボランティア」といっても結局は人と人のつながりを大切にすることだといった内容を語られました。

このことは、いま最もタイムリーで大切な話だと、共感いたしました。
実は本年も「SGIの日」記念提言が発表されて、昨年に引き続き、市行政の立場から研究発表するつもりで勉強していました。
そして、今回の「SGIの日」のテーマの一つが、「災害時における人間の安全保障」なのです。
世界では、紛争や内戦、貧困や飢餓、環境破壊などの脅威、そして相次ぐ災害によって、生命や尊厳が危険にさらされている人々、人権侵害と差別に苦しんでいる人々が大勢います。

この10年近くでも、2004年のスマトラ沖大地震、2010年の中米ハイチでの大地震などにより、多数の犠牲者が出ました。
昨年も、3月の東日本大震災をはじめ、ニュージーランドやトルコでの地震、タイやフィリピンでの水害、東アフリカ諸国での干ばつなど、世界各地で災害が続きました。
亡くなられた方々にあらためて哀悼の意を表させていただくとともに、一日も早い復興を心から祈るばかりです。
また、東日本大震災によって発生した福島原発の事故では、放射能汚染により大勢の人々が長期にわたる避難を余儀なくされ、子どもたちの健康や、農作物や食品への影響に対する懸念も高まるなど、災害に伴う事故としては未曽有の被害をもたらしました。

こうした前触れもなく深刻な被害をもたらす脅威に留意を促してきた、アマルティア・セン博士は、人々の生存・生活・尊厳を守り抜くための「人間の安全保障」のアプローチ(方策)を、地球的な規模で進める必要性を訴えています。
「人間の生存と日々の暮らしの安全を脅かし、男女が生まれながらに有する尊厳を冒し、人間を病気や疫病の不安にさらし、そして立場の弱い人々を経済状況の悪化に伴う急激な困窮に追いやる種々の要因に対処するためには、突然襲いくる困窮の危険にとくに注意する必要がある」
(人間の安全保障委員会『安全保障の今日的課題』朝日新聞社)
つまり、「人々が危機や予想できない災害に何度も見舞われ倒れそうになるとき、『人間の安全保障』は、こうした人々を支える手がそこにあるべきだと考える」と、主張されています。

災害は、人間の生にとってかけがえのないものを一瞬にして奪い去ります。
何より、自分を生み育んでくれた父や母、苦楽をともにした夫や妻、最愛の子どもや孫たち、そして親友や地域の仲間など、自分の人生の大切な部分を成していた存在を失うことほどつらいものはありません。
また災害は、人々の生きる足場となる家を破壊し、それまでの生活の営みや地域での絆を奪い去る悲劇を引き起こします。
さらに災害は、多くの人々の仕事や生きがいを奪い、“尊厳ある生”の土台を突き崩します。
そして災害は、社会が抱える問題を断層のように浮き上がらせる側面があります。
高齢者をはじめ、女性や子ども、障がいのある人々、経済格差に苦しむ人々といった、社会で厳しい状況に置かれてきた人に被害が集中する傾向が、東日本大震災でも見られました。

だからこそ、被災した方々が少しでも生きる希望を取り戻せるよう、住む場所や仕事の変更を余儀なくされた人たちが“心の落ち着く場所”を新たに得られるよう、そして「心の復興」「人生の復興」を成し遂げることができるよう、支え続けていくことが、同じ社会に生きる私たちに求められているのです。
そうした背景を踏まえて、「SGIの日」記念提言では3点のポイントを提示されています。
①国家が最優先で守るべきものは、民衆の幸福と安全であるとの思想哲学。
②“自分だけの幸福や安全もなければ、他人だけの不幸や危険もない”との生命感覚に基づいた世界観の確立。
③「エンパワーメント(内発的な力の開花)の連鎖」が、事態打開の鍵となるとの洞察。

先述の「人間の安全保障委員会」による報告書においても、
『人間の安全保障は「人間に本来備わっている強さと希望」に拠って立つものであり、「自らのために、また自分以外の人間のために行動を起こす能力は、人間の安全保障実現の鍵となる重要な要素である」。ゆえに人間の安全保障を推進しようとするならば、「困難に直面する人々に対し外側から何ができるかということよりも、その人々自身の取り組みと潜在能力をいかに活かしていけるかということに、重点が置かれてしかるべきである」』と書かれています。

今回の池田市主催の人権セミナーで、矢崎由美子さんが語られた内容も全くそのことであり、驚きと感動を持って拝聴させていただきました。
自らが被災者となって避難所での生活を送る中で、周りからの救援の手のみを便りとするのではなく、自分達で力を合わせて智慧を出し一つ一つの問題に立ち向かっていった経験、そして、そうした生活の中での感動のドラマの数々など、涙なしでは聴くことができない内容でした。

以前から申し上げているのですが、議会活動において「人権」というとどうしても被差別部落の話に終始してしまい、本来はその根底に横たわる「万人に保障されるべき尊厳ある生をどう確立していくのか」といった本質論にたどり着きません。
今回の人権セミナーを機に、そうした視座にたった議論ができるように、池田市の「人権」意識が一歩前進することを切に願います。

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