2012年2月23日木曜日

「老後の生活破綻」

「多田さん、この本、読んでみて」
先日、市民の方から言われて読み始めました。
その方は、高齢者の独居男性です。
「私たち高齢者がどんな生活をしているのか、どんな不安を感じているのか、読んで学ぶべきだ」と。

読んでみた感想としては、読者に対して、ただいたずらに不安を煽るのではないかと思いました。
この本には、認知症・病気・詐欺・事故・子どもの失業などにより、周囲に気づかれないまま生活が破綻してしまう「高齢者の生活破綻」事例が6つ載っています。
しかし、私としては日頃の市民相談で対応しているそのままの事例、というかもっと困難な状態の方もおられるわけで、特に驚くようなことでもありません。
そうした方の中には、本書で書かれているように、必要としているサービスに結びつかずに苦しんでいる高齢者もおられますが、権利の主張のみされて無理を通そうとするある意味でわがままと言わざるを得ない方もおられます。
私としては、そうした方からのご相談でも市役所の担当課につなぎます。担当課の職員は、それでも一生懸命に丁寧に対応されています。

そうした現場を知る私としては、本書で書かれているように、適切なサービスや機関と人を繋げて「健康」「家族」「収入」が整えば、幸福かといえばそうではないと思います。
当然、適切なサービスや機関と人を繋げつつ問題を解決できる体制作りは大切ですし、行政はそのための努力を怠ってはならないと考えますが、その人の人生がその人にとって本当に充実した価値のあるものになるかどうかはもっと別の問題ではないでしょうか。
それを「行政が悪い」「政治が悪い」といっても、本当の意味での問題解決にはならないと思います。
高齢者に限らず、処々の問題で相談に来られる方は、その時はいったん方向性が見えたとしても、先々で同じような困った立場に陥られることが多いからです。

それに関しては、本書の最後で著者は「だれもが社会資源になりうる」と書かれています。また、人や自分の「希望ある生活」を建て上げるにはお互いの助け合い、励ましあいが必要なことだとも言っています。
そうした部分に関して、今の社会、そしてこれからのことを考えさせていただきました。

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